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ゼブラフィッシュ発生毒性学とデジタルトランスフォーメーション

2023/02/21
患者がん移植モデル(PDX)とターゲットバリデーション

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ハイスループットゼブラフィッシュ発生毒性試験プロトコルの確立

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自動ゼブラフィッシュ創薬のインパクト

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》システムズ薬理学的アプローチによる新規心不全治療標的遺伝子ECI2の発見

                     
2013/02/09

第42回日本心脈管作動物質学会

システムズ薬理学的アプローチによる新規心不全治療標的遺伝子ECI2の発見

島田康人、黒柳淳哉、梅本紀子、張貝貝、西村有平、田中利男

現在わが国の心不全患者数は推定約160万人、社会の高齢化に伴い患者数の著しい増加が予想されている。心不全の基礎疾患としては虚血性心疾患、不整脈、心弁膜症、心筋症などがあるが、いずれも最終的には心臓のポンプ機能の低下・消失を誘導し死にいたる。
 我々は今回、マウス・ラットに続く第3のモデル動物として注目されている「ゼブラフィッシュ」を用いて僧房弁逆流症心不全モデルを構築した。このモデルは、房室弁の閉鎖不全と心拍出量・抹消循環量の低下、引き続く容量負荷による心室の著明な拡大が認められた。既存の心不全治療薬を用いたスクリーニングを行ったところ、複数の既存薬に応答し、特にアドレナリンベータ受容体遮断薬により生命予後が改善した。この心室組織を、Laser Capture Microdissectionで回収し、total RNAを抽出、DNAチップを用いて網羅的遺伝子発現解析を行った。そこで得られた遺伝子群に対し、siRNA cocktailによるノックダウンスクリーニング、およびmorpholino antisenseを用いたバリデーションにより、新規心不全治療ターゲットECI2を発見した。ECI2のノックダウンにより、心臓におけるATP量の増加を認め、心不全モデルの病態および表現型は改善した。なおこのATP量の増加は、in vitroでも認められた。
 本研究では、ゼブラフィッシュを用いて、オミックス解析とin vivoスクリーニングを統合した定量的システムズ薬理学的アプローチにより、新規心不全治療ターゲットを発見したので報告する。