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ゼブラフィッシュ腫瘍循環器学の新しい展開
現在,国際的にも非臨床腫瘍循環器学は,主 に 3 つの研究戦略により構築されている(図 1).まず,歴史的にも重要な役割を果たしてき たマウス/ラットなどの哺乳類モデルが中心的 な研究となる.この哺乳類モデルは,コストや 時間の課題がある.現状では短期間および少数 の正常哺乳類における抗悪性腫瘍薬による心毒 性解析が中心となり,多くの場合,病理学的解 析となっており,リアルタイムの機能的毒性機 構解析は少ないことが多い.今後,担がん哺乳 類における長期治療による心毒性を,安全性薬 理学解析として機能的毒性を定量することが期 待されているが,コストと時間の壁は大きいと 思われる.
これらの課題を克服するためにヒト心筋細胞 (オルガノイド,iPS細胞,ES細胞など)を活用 した腫瘍循環器学が,最近急激に発展してい る.特にヒト細胞由来のオルガノイドは,抗悪 性腫瘍薬による臨床ヒト心毒性機構に対する外 挿性において当初より最も期待されているモデ ルである.しかしながら現時点においては,以 下の課題が残されており,今後のさらなるオルガノイド研究技術イノベーションが期待されて いる.
(1)現在のオルガノイド内に血管ネットワー クが欠落しており,これが臨床的腫瘍循環器学 を実現するには弱点となっている.
(2)当初より期待されていたオルガノイドに よるハイスループット・ハイコンテントスク リーニングが,いまだに実現していない.
また,ゼブラフィッシュ(Daniorerio)を用い た腫瘍循環器学は,モデル生物としてのゼブラ フィッシュのユニークな利点を生かし,がん治 療が心機能に及ぼす影響など,がん治療と心血 管系疾患の相互作用研究における従来の哺乳類 モデルなどの弱点を補完して,最近国際的にも 急速に発展している.このゼブラフィッシュ腫瘍循環器学は,さまざまながん治療薬の重大な 副作用としての心毒性が認識されつつあること から,特にグローバルにも重要性が増大して いる.
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