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2025/06/02

ポドサイトパチー創薬スクリーニング

現在グローバルにも不⾜している in vivo フェノタ イプスクリーニングに使⽤できる新規蛍光⾊素を開発するために、96 ウエル ZFplate で、透明化した ゼブラフィッシュ (MieKomachi001) を飼育し、飼 育⽔に約 600 種類の蛍光⾊素ライブラリーから各 1 種類の蛍光⾊素最終濃度5μMを添加して、24時間後にイメージスクリーニングした。
その結果、いくつかの蛍光⾊素により、選択的に⾎管を可視化することが明らかとなり、その中でも蛍光強度が最⼤のものが ZMB741 であった。
その後 ZMB741 は、⾮侵襲的投与により⾎管壁ではなく多数の血漿蛋白質に結合していることが、明らかとなり、大規模な in vivo フェノタイプスクリーニングが実現し ている。
例えば、apolipoprotein A-I (Kd=0.84μM) hemopexin(Kd=3.13μM)など親和性は少し異な るもののほとんどの血漿蛋白質に結合することが、in vivo蛋⽩尿定量解析などにおける⼤きな有⽤性の基盤となっている。
さらに、既存のトレーサーである蛍光デキストラン、EB、ICG などは、ゼブラフィッシュにおいても⼼⾎管注射など侵襲的投与しかできない。
また、⽔溶液中のフリーのZMB741は、ほとんど蛍光が認められないが、血漿蛋白質に結合すると蛍光量子収率が高度に向上することにより、既存トレーサーより高感度な血漿蛋白質動態解析が可能となり、医学上重要な血液脳関門(BBB) 破綻(ACS Chem. Neurosci. 2013, 4, 1183?1193) やポドサイトパチー蛋白尿の in vivo イメージングなどに、適応することになりました。
ポドサイト(糸球体上皮細胞)のスリット膜構成蛋白の一つであるネフリンが 1998 年に発見されて以来,ポドサイトに関する知見は飛躍的に増え,ポドサイト傷害が不可逆的子球体硬化症,さらには,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD) を引き起こすことが明確になった.ポドサイト傷害が病態の中心である腎臓病は一括してポドサイトパチー(podocytopathy)として捉えられ,典型的には一次性ネフローゼ症候群の疾患が含まれ る。これらの疾患の治療に使用されているグルココ ルチコイドや免疫抑制薬には,免疫学的作用以外にも直接的ポドサイト保護効果を有する可能性が報告されている.しかし,現状では,ポドサイト を強力に保護し,CKDの進行を抑制することが確認されている治療薬はグローバルにも存在しない。 ポドサイトパチー発症・進行機序が解明され,特異的な治療や予防法が開発されることが期待される.そこで、ネフリン遺伝子などの KO や KD によ りゼブラフィッシュポドサイトパチーモデルを創生し、ZMB741 による in vivo 蛋白尿個別定量システム を構築した。このin vivoフェノタイプスクリーニン グにより既存薬リポジショニングスクリーニングの結果、少なくとも2種類の作用機序の異なる治療 薬候補がヒットした。現在これらの新規治療薬候補のポドサイトパチー治療機構を解析し、最終的には臨床応用を目指している。

田中利男(三重大学大学院医学系研究科システムズ薬理学、三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター)


関連ファイル

ポドサイトパチー治療薬スクリーニング

individual in vivo zebrafish proteinuria screening

関連リンク

三重大学大学院医学系研究科システムズ薬理学

三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター