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ゼブラフィッシュ創薬の国際的展開

                     

2023/03/14


ゼブラフィッシュによる医学研究は,他の医学研究モデル動物に比べ、その進展は最も遅く開始されましたが、その後の医学論文数が増加し続けている数少ないモデル動物となります。
現在までの創薬は,ハイスループットが可能なiPS細胞やES細胞などのヒト細胞や,ロースループットながら深いin vivoメカニズム解析に活用してきた哺乳類モデルが2大モデル生物でありましたがゼブラフィッシュは、in vivoハイスループットスクリーニングが実現する唯一のモデル脊椎動物であり,創薬モデル生物の第三極を形成し,動物愛護との調和性、スループットやコストなどにおいて全く新しい創薬パラダイムを実現することになります。
そこで,ゼブラフィッシュの創薬モデル動物としての特徴について簡潔に述べます。脊椎動物であるゼブラフィッシュは,ヒト疾患ゲノムとの相同性が約80%あります。ゼブラフィッシュ胚は,受精後1日で心拍動が認められる等,臓器形成が著しく早く,また交配時には1組1回で約200個の受精卵を得ることができます。そして,受精卵や体長3mmの稚魚は透明で,精密なフェノタイプ定量解析を可能にし,96ウエルプレートを用いれば,1mg 以下の各化合物でin vivoにおける薬効と安全性の大規模スクリーニングが完了できます。また,動物愛護との調和性が高く,欧米では早くから活用されており、国際的にヒト疾患モデルに焦点を当て、2014年にはZebrafish Disease Model Society(ZDMS)が組織され、継続的に学会活動を展開しています。
 一方翌年の2015年に、我が国ではヒト疾患モデルに加えスクリーニングシステムや創薬研究の多様な演題と産学官から多彩な参加者により、第1回ゼブラフィッシュ創薬研究会(Zebrafish-Based Drug Discovery,ZDD2015)が、三重大学において開催されました。その後も本年の第9回はつくば市で、予定されております。さらに国際的ゼブラフィッシュ創薬支援CROも、多数(17社)創業され確実に重要な役割を果たしていることが明らかになっています。
すでに多数のゼブラフィッシュ創薬成功例は、報告されているが、特筆すべきことは,これらほぼ全例においてヒト病態モデルゼブラフィッシュによるフェノタイプスクリーニングが重要な役割を果たしていることです。
2015年オバマ米国大統領によるPrecision Medicine Initiative により,グローバルにも先端がん個別化医療としてのプレシジョンメディシンが急速に展開されています。一方,ゼブラフィッシュ創薬の有効性が明らかになりつつある薬理フェノミクスとして, 先端がんプレシジョンメディシンにおいては,患者がん移植モデル(Patient-Derived Xenograft Model:PDX) を活用することが国際的に急激な発展を示しています。 1970年代から米国NCIで開始されたヒト株化がん細胞培養による新しい治療薬開発は満足すべきものでないことから,国際的にも患者がん移植モデルへ大きくシフトしています。一方,臨床がん移植ゼブラフィッシュによる個別化医療は,各患者がん検体のフェノミクス解析結果をその患者の治療薬選択にリアルタイムで活用することができ,真の次世代プレシジョンメディシンであるといえます。
生体の科学69:297-299,2018、日薬理誌.154:78-83,2019、実験医学40:36-43,2022

関連リンク

三重大学大学院医学系研究科システムズ薬理学

三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター