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》HSP90阻害薬の網膜毒性に関するシステムズ薬理学

                     
2014/06/11

HSP90阻害薬の網膜毒性に関するシステムズ薬理学

Systems pharmacology of retinal toxicity induced by HSP90 inhibitor

○西村有平1,2,3,4,5)、笹川翔太1)、村上宗一郎1)、川端美湖1)、張貝貝1)、梅本紀子1,2,3,4,5)、島田康人1,2,3,4,5)、山田裕一郎6)、金丸千沙子6)、木村和哉6)、井上智彰6)、千葉修一6)、田中利男1,2,3,4,5)

○Yuhei Nishimura1,2,3,4,5), Syota Sasagawa1), Soichiro Murakami1), Miko Kawabata1), Beibei Zhang1), Noriko Umemoto1,2,3,4,5), Yasuhito Shimada1,2,3,4,5), Yuichiro Yamada6), Chisako Kanamaru6),
Kazuya Kimura6), Tomoaki Inoue6), Syuichi Chiba6),and Toshio Tanaka1,2,3,4,5)
三重大学大学院医学系研究科1)薬理ゲノミクス、2)システムズ薬理学、三重大学3)メディカルゼブラフィッシュ研究センター、4)新産業創成拠点オミックス医学、5)生命科学研究支援センターバイオインフォマティクス、6) 中外製薬(株)研究本部
Mie University Graduate School of Medicine, 1)Department of Molecular and Cellular Pharmacology, Pharmacogenomics and Pharmacoinformatics, 2)Department of Systems Pharamacology, 3)Mie University Medical Zebrafish Research Center, 4)Department of Omics Medicine, Mie University Industrial Technology Innovation Institute, 5)Department of Bioinformatics, Mie University Life Science Research Center, 6) Research Division, Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.

HSP90は癌細胞の増殖や生存に関わる様々な蛋白質の安定性および活性化に重要な役割を果たしている。そのため、HSP90は抗癌薬の重要な分子標的と考えられ、多くの製薬企業がHSP90阻害薬の開発を進めてきた。Pfizer社のSNX-5422、Novartis社のAUY-922、Astex社のAT13387の臨床試験では、これらのHSP90阻害薬の抗がん剤としての有用性が示された一方、HSP90阻害薬による網膜毒性の出現が問題となった。しかし、その分子機構は依然として不明である。本研究では、HSP90阻害薬の網膜毒性に関する分子機構の解明を目的として、小型脊椎動物モデルであるゼブラフィッシュを用いたシステムズ薬理学的解析を実施した。ゼブラフィッシュは、形態と機能ともにヒトと極めて類似した網膜を有している。また、体長が小さく、多数の個体を比較的小さなスペースで飼育することが可能であるだけでなく、解析に必要な化合物が少量である、などの利点を有している。本研究では、受精後3日目から10日目までHSP90阻害薬CH5164840をゼブラフィッシュに曝露することにより、網膜視細胞層が変性することを明らかにした。また、トランスクリプトーム解析とバイオインフォマティクス解析を用いて、HSP90阻害薬の網膜毒性に関連する可能性のある分子を同定した。さらに、transcription activator-like effector nucleases (TALEN)を用いたゼブラフィッシュのゲノム編集により、HSP90阻害薬の網膜毒性発現におけるこれらの分子の関与を検証した。その結果、HSP90阻害薬の網膜毒性発現機構の一端を解明することに成功し、化合物の毒性発現機構におけるon targetとoff targetの鑑別にシステムズ薬理学が有用であることを明らかにしたので報告する。

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