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分子標的薬の心毒性に関するシステムズ薬理学

                     

2015/02/06


○西村有平1,2,3,4,5、川端美湖1,6、梅本紀子1、島田康人
分子標的薬の心毒性に関するシステムズ薬理学

1,2,3,4,5、黒柳淳哉1、張貝貝1、宮部雅幸6、田中利男1,2,3,4,5

1三重大学大学院医学系研究科薬理ゲノミクス
2三重大学大学院医学系研究科システムズ薬理学
3三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター
4三重大学新産業創成研究拠点オミックス医学研究室
5三重大学生命科学研究支援センターバイオインフォマティクス
6三重大学医学部臨床麻酔部

近年、様々な分子標的薬の開発が進み、癌に対する治療成績が向上する一方、多様な副作用も報告されている。マルチキナーゼ阻害薬であるソラフェニブは、腎細胞癌、肝細胞癌に対する有効な治療薬であるが、心毒性も有することが明らかとなり、投与にあたり十分な心機能モニタリングが必要である。しかし、ソラフェニブの心毒性のメカニズムについては不明な点が多い。本研究では、ソラフェニブの心毒性のメカニズム解明を目的として、ゼブラフィッシュをモデル動物としたシステムズ薬理学的解析を行った。まず、蛍光イメージングを用いたゼブラフィッシュ心機能解析により、ソラフェニブがゼブラフィッシュにおいても心毒性を有することを明らかにした。また、トランスクリプトーム解析により、ソラフェニブを投与したゼブラフィッシュの心臓では、stanniocalcin 1 (stc1) 遺伝子の発現が低下していることを見出した。さらに、アンチセンス核酸によりstc1をノックダウンしたゼブラフィッシュにおいて心機能が低下すること、stc1を一過性に過剰発現したゼブラフィッシュではソラフェニブの心毒性が減弱することを明らかにした。また、ヒト由来心筋細胞においても、ソラフェニブ投与によりSTC1の発現が低下することと、活性酸素が増加することを見出した。以上の結果より、ソラフェニブの心毒性には、STC1の発現低下が重要な役割を担っていることが示唆された。また、分子標的薬の心毒性メカニズム解析におけるゼブラフィッシュの有用性が明らかとなった。

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